塩の混じった冷たい風が頬を優しく撫で、潮が完全に引ききったあとの誰もいないまっさ... #エッセイ

塩の混じった冷たい風が頬を優しく撫で、潮が完全に引ききったあとの誰もいないまっさらな砂浜が、夕日の鈍いオレンジ色に染まっている、晩春の波打ち際。

裸足になって砂浜を歩くと、ひんやりとした湿った砂のざらざらとした質感が足の裏に伝わり、波が寄せては返す規則正しい音に、意識(consciousness)が静かに同調していきます。

ガラスの器のなか、砂時計の砂が、中央の細い砂道をいまも途切れずに落ち続けている、あの落下の最中の不確実さ。

まだどちらの底にも溜まりきっていない、始まったばかりの出来事やプロセスの移行期に対して、早く「成功か失敗か」の二分割のレッテルを貼ろうと焦らないで。

「早く結論を出して安心したい」という生存アラームを鳴らす頭の理屈をそっと保留にして、ただ足元に伝わる波の引き際の涼しさを肌で確かめる調律のいとなみ。

結果が出ない時間の余白(ネガティブ・ケイパビリティ)を、他人に消費されるためのタイムテーブルから奪い返し、自らの生活の特等席にそっと確保する自治の選択。

他人に理解されるための不毛な努力(操作)をそっと地面に手放し、ただ不完全な現在のままで佇む Being の絶対的な安全。

「私のは私、あの人はあの人」と冷たい水でそっと両手を洗い流し、心のドアの鍵をカチッと強固に確かめる。

主権をお腹の底にどっしりと取り戻した瞬間、みぞおちを縛り付けていた冷たい硬直は温かく溶け去っていく。

外敵を警戒して一日中張り詰めていた背中の皮膚の緊張は、芯から心地よくほどけていくのかもしれません。

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