「時間の経過をそのまま肌に刻んだ鉄の湯沸かしは、僕たちに、傷つきながら生きること... #エッセイ

「時間の経過をそのまま肌に刻んだ鉄の湯沸かしは、僕たちに、傷つきながら生きることの圧倒的な気高さを教えてくれる。」

朝露をたっぷりと孕んだミントやラベンダーの葉から鋭く清らかな香りが大気いっぱいに漂い、まだ世界が動き出す前の圧倒的な静寂に包まれている、初秋の黄昏時のハーブ園の片隅。

湿った黒い土の上に置かれた丸椅子の籐の座面に腰掛け、肺の奥深くまで冷たい新鮮な空気が満ちていくにつれて、日中の騒がしいDoingのレースで擦り切れた神経系が静かに息を吹き返していきます。

使い込まれて少しずつ渋い風合いを増し、時間の経過や熱の痕跡をそのまま肌に刻んだ鉄の湯沸かしの、あの言葉にならない不変の美しさと静けさへのアテンション。

「大人なんだから早く傷を克服して完璧になりなさい、立ち止まるな」という、傷を嫌う現代社会の冷酷なプレッシャーが、夕暮れの冷たい風となって皮膚を刺激するかもしれない。

しかし、心理学者カール・ロジャーズがその生涯をかけた臨床の底で深く見出したように、人間が真に幸福であるためには、自らの体験に対してどこまでも開かれていなければならないのだと思います。

傷つきやすさや脆さを必死に隠すために、これまでの過酷なコミュニケーションのなかで身にまとってきた頑丈な壁(仮面)をそっと解任する。

いま流れているありのままの脆い生身のプロセスそのものになり、良し悪しの判断を一切挟まずに、その流動的な実感にそっと優しく寄り添うセルフケアのいとなみ。

そこにしか、本当の意味での創造的な生は訪れないのだという事実を静かに受け入れながら、私はまだ、この薄暗い部屋の片隅で、自分の輪郭がゆっくりと定まっていくのを待っている。

未完成な自分へのもやもやとした不安と、ただここに在るだけで無条件に祝福されているという圧倒的な肯定感が、骨盤の底で静かに溶け合っていくのを感じる。

他人に理解されるための流暢な説明をそっと地面に手放し、人生の操縦桿を自分の手へと完全に取り戻した、静かな実存の夜明け……

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