長年使い込まれて真っ赤に錆びつ...

長年使い込まれて真っ赤に錆びつき、石肌の周囲の凹凸が白く擦り切れて毛羽立ち、表面に雨露の痕跡を無数に焼き付けた、名もなき古い石碑の側面のクローズアップ。

衣服の繊維が擦れ合うササァという小さな摩擦音を皮膚の表面でありありと確かめながら、肺の肺胞ひとつひとつが冷気で引き締まり、呼吸の深さを失ってしまう、冬の朝の無人の古い石造りの並木道でのしつらえ。

極限までカメラのレンズをその石の表面へと近づけるミクロの接写のなかにあって、誰も歩かない冬の旧道の脇に、ぽつんと静かに佇む名もなき石碑の風化の佇まいをじっと見つめている時間。

生産性の向上や、短期的な成果ばかりを最優先で競わせ、立ち止まる不器用な者を不良品として容赦なく引き離す現代社会のあまりにも過酷な濁流の力学への埋没。

「生産性のない人間は生きている価値がない、甘えるな、早く結果を出して有能さを証明しろ」という冷酷な自己責任論が、乾いた砂を巻き上げる風のように容赦なく吹き付けるかもしれない。

しかし、そんな狂信的な戦場のなかで、自らの脆さや傷つきやすさを排除すべきシステムエラー(バグ)として軽蔑するのをやめて、意図的に立ち止まる佇みは、もっとも気高い自治の姿に他ならないのです。

他人が勝手に用意した幸福のコピーや独自の採点表をきっぱりと拒絶し、他者のノイズを心の門の外へドスンと降ろし、ただ息をして、ここに在る(Being)という事実そのものの完璧な尊厳。

傷ついたという生々しい痛みと、その言葉を受け取らずに放置できたことへの冷静な自治の感覚が、胃の腑の底で泥のように混ざり合っている感覚。

安易な正解で自分を納得させるのをピタッとやめ、自らの内なる報告を確かな真実として全面的に信頼して、ただ静かに旧道の暗闇の温度を測っている。

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