潮が完全に引ききった広大な干潟...

潮が完全に引ききった広大な干潟の泥濘が西日の最後の鈍いオレンジ色を静かに反射し、遠くから重く響く船の汽笛の音が、潮風に乗って漂ってくる塩辛い泥の匂いと混ざり合う、ある夏の終わりの夕暮れ時のこと。

裸足になって冷たい泥のぬるりとしたざらざらした質感を足の裏でありありと確かめながら、ゆっくりと夜の影が世界の輪郭を包み込んでいくのを眺めている静かな空間。

潮が引いたあとの砂浜の磯だまりに、誰の目にも留まらずにぽつんと残された、透き通った一滴の水の心許なさと美しさ。

大切な存在を理不尽に失ってしまい、世界から自分一人だけが置き去りにされたような、底のない実存的な虚無感に襲われる過酷な夜のこと。

「普通はこれくらいの時間で前を向くものだ」という顔のない世間のルールブックに、自らの美しくも不揃いな感受性を無理やり当てはめようとするDoing(操作)の摩擦。

そのうまく言えない、胃の底が重くなるような質感(フェルトセンス)の傍らに、ただ良し悪しの判断を一切挟まずにつき合い、名前をつけずに伴に座る和解のしつらえ。

他人に理解されるための流暢な説明をそっと地面に手放し、人生の所有権を自分の手へと完全に取り戻した、静かな実存の夜明け。

自らの内なる静けさを自分のスペースで守り抜く、これこそが魂の主権を守る最後の自治。

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